イヴェアムは十歳を過ぎてから誰かと風呂に入ったことなどない。あの側近だったキリアでも一緒に入ったことなどなかったという。それはひとえに恥ずかしいという理由なのだが、まさか裸を見られたのが男であり、しかも懇意にしている人物だということがさらに恥ずかしさを助長させているという。
「陛下はああ見えて初心だ」
何処からどう見ても初心だがとは今の状況で口が裂けても言うべきことではなかった。
「それに何というか陛下はお前にその……いや、お前に見られたからこそああなっておられる」
まあ、今まで男性に裸を見られていないのに、突然他人である自分に見られたらそうなってもおかしくはないだろうと判断する。ただマリオネの言い方には引っ掛かりは覚えたが。
「今も布団を頭から被り出てこようとしない。さっきも言ったようにこれはお前が招いたことだ。何とかしてこい」
マリオネの言い分は正しい。事故とはいえ日色の安易な行動で招いた結果なのは違いない。だから関係無いと言って逃げるわけにはいかない。
「……はぁ、分かった。行って来る」
「待てヒイロ!」
こっちが渋々行くことを決意したというのに、リリィンが動きを止めるように声をかけてくる。
「……何だ?」
「…………」
「……?」