「今回の情報活用の目的は、売上を上げ、利益率を拡大し、回収を早める事。これ以外を目的にせず、その為にはどう利用するか考えてくれ」
山田部長は次回の営業会議で、こう口火をきった。
勉強会後、情報システム部の協力で、自分の得意先との取引データが簡単に利用出来るようになった。
山田部長の話しは、次のようなものだった。
「私たちは営業である。毎日机の上でパソコンとにらめっこするのが、仕事では無い。」
「お客様の所へ行くのが仕事である。しかし、以前のように戦略も情報もなく訪問する事は、罪悪である。 お客様の時間を浪費し、こちらの時間も交通費もすべて浪費する。」
「商談とは、私たちとお客様とで新しいお互いの価値を生み出す事である。」
その為に必要な情報を生み出し、提供する為に情報活用を行うのである、と山田部長は続けた。
売上を上げる為の情報活用として、山田部長は、特に次の五点を上げた。
日常活動としては、取引の曲がり角を早めに見つける事。
落ち込みの曲がり角、急成長の曲がり角、グラフがどちらかに曲がりかけたら、早く手をー打つこと、曲がりきってしまってからでは、どうにも成らない。
一歩の早い手が、数パーセントの売上を上げる。
近づきつつある得意先と遠のきつつある得意先を、見極める事。
商品全体の売上が下降線に入ったら、遠のきつつある。発注間隔が開いたら遠のきつつある。 一回あたりの発注量が減ったら遠のきつつある。
取引商品点数が少なくなったら遠のきつつある。
これらのデータを何時も見ていて、早めに手を打つ事。
受注を予測して、早め早めにアプローチする事。
我が社の取引は繰り返しが多い。注文が来てからアタフタするのでは無く、過去の実績を分析し、今後の受注サイクルや頻度を予測する事。予測してこちらからアプローチし、早めに受注をいただく。 早めであれば生産体制も楽になりコストも低減する。そして予測しておれば、注文がこなかった時に手が打てる。
キャツシュフロー時代にあった取引をする事。
昔は、売上至上主義で、売上さえ上がれば少々回収が長くてもあまり問題にならなかった。 しかし、キャッシュフローが重視される現在、一番の問題は、売上が多くて回収が遅い顧客である。 その顧客の為に、在庫を準備し、売掛金として金を貸し、買掛金はすぐに支払わなければならない。
それよりも、売上は小さいが回収の早い顧客を、大きくする事が重要。
売上と売掛債権の関係を何時も分析するように。
分析したデータは、得意先へ持参して一緒に考える事。
取引情報を社内だけで見ててはダメだ。得意先へ持参し、なぜ落ちたのか、なぜ伸びたのかを一緒に考える事。 得意先は、仕入を商品群に見る事はあっても、仕入先別商品別にみる事は少ない。 我が社の取引全体を分析したりする事も少ない。 それ故に持参して、取引全体を検討していただく事が大事である。
幸いに、まだそういう仕入先は少ない。だから行うのである。