33 大変だというエダの言葉にレカンが同意したのは、そういう意味ではなかった。 先ほど感じたけた外れの強さこそ、このユリーカとかいう魔獣の本質だ。今は何かの働きで隠蔽されているが、先ほどレカンの背筋を凍らせたものこそ、この魔獣の正体だ。 ということは、たぶんジェリコもそうなのだ。 だが、その強さは隠蔽されている。何かの働きによって。 もちろんシーラだ。シーラが何かの魔法によって、ジェリコの正体を隠しきっているのだ。ユリーカの強さをたちまち隠してしまったように。 ということは、単体でもレカンが勝てないかもしれない強大な魔獣が二匹いるということなのだ。 これはまさに大変というしかない事態である。 だが落ち着いて考えてみれば、そもそもシーラこそ脅威なのだ。敵に回せばたぶん勝てない。その恐ろしい魔法使いの近くでレカンは短くない時間を過ごしたが、最初の短い期間を除いて、シーラが自分やエダを害する危険を感じたことはない。何を考えているかわからないところはあるし、油断するとひどい目に遭わされそうな気もするが、この世界でレカンが一番心を許せる人間の一人だ。 ジェリコについても、今までのところ、敵に回る心配はしなくていいように思われる。あまり身構えないほうがいいだろう。「ぶるふふん?」 何を考えているの、と言わんばかりにジェリコがレカンの顔をのぞき込んだ。「何でもない」「ぶるぶる」 ジェリコがレカンの肩をぽんぽんとたたいた。 心配するな、とでも言うように。 そしてレカンが右手に持った剣を指さした。「ぶるる?」 そういえば剣を抜いたままだった。レカンは剣をしまった。 そのあとしばらくシーラはエダと話をして立ち去った。レカンはシーラに用事があったので引き留めようとしたが、シーラは目線でレカンの口を封じた。 レカンとエダとジェリコとユリーカはゴンクール邸に向かった。 門番は二匹に増殖した猿をみて驚いた目をした。