「ヂュー」 白、黒、灰色のそれぞれ異なる色をした、グレートジャイアントラットである。つぶらな瞳、触角の役割を果たすヒゲ、細長い尻尾。どれも大きさ以外はネズミそのものだ。「彼女達はマロル、ウルミ、スルガ。今日狩りの帰りに見つけてテイムしたグレートジャイアントラットです」 この三匹が、グファドガーンの推薦したランク2の魔物である。 勿論、グファドガーンが捕まえて飼いならした訳ではない。元々は三匹ともヴァンダルーとルチリアーノが行っていた、アンデッドと生物の交配実験の結果生まれ、ブラッドポーションを飲んで魔物化した実験動物である。「整列」「ヂュ~」 アンデッドとの交配の結果生まれ、ブラッドポーションで魔物化したお蔭か、マロル達のヴァンダルーに対する忠誠心は強固だ。しかも、外見からはその特異な生まれを判別する事が出来ず、普通のグレートジャイアントラットにしか見えない。 そしてグレートジャイアントラットはゴブリン程ではないが、数が多い魔物だ。ヴァンダルーが偶然出会ってテイムしたと言っても、ファングと言う前例があるため誰も強く否定する事は出来ない。テイマーギルドのマスター、バッヘムも怪しんだ様子は見せなかった。「撫でても大丈夫?」「乱暴にしなければ大丈夫ですよ。ヒゲや耳を引っ張ったりしないように」 ヴァンダルーがそう言うと、子供達は大人しいマロル達を撫で始めた。孤児院の子供達にとってネズミは慣れた存在だが、後ろ足で立ち上がると自分達より大きい巨大ネズミの魔物は好奇心を十分に刺激したようだ。「チュウゥン♪」 マロル達はそんな子供達に対して、高い鳴き声をあげて可愛さをアピールし、艶やかな毛並みの身体ですり寄って甘え始める。 いわゆる、サービスである。「可愛い~っ!」「え、こいつ等最初は『ヂュー』って結構低い声で鳴いてなかったっけ?」 子供達の中では年長なマッシュだけはマロル達のあざとさに気が付いたようだが、他の子供達は愛想の良い巨大ネズミ三姉妹に夢中である。