「天、わがままを言わないでくれ。いい子だから天にはわかるだろう」 「…………わかりません」 天の返事が予想外だったのか父親は目を丸くして天を見つめた。 「……あの子はお前より優秀ではないし、兄弟の中で有能であるかと問われたらそうだとは言えない。 あの子の治療費は正直我が家の負担でもある。領の民から納められたものもこの家の運営に使っているし、公の人間が一人の子供だけを贔屓できない。わかってくれ」 理由を言わないのは不義理だと思ったのか、父親は天から目をそらし、渋々と言った感じで語った。天は自分の不甲斐なさに拳を強く握ることしかできなかった。