オレは、ナーヴ王国黒竜騎士団総長のサヴィス・ナーヴだ。10年前、弱冠17歳の時に騎士団総長の地位についた。通常ならありえない年齢だが、王弟という身分が、有無を言わさず総長の席に座らせたのだ。総長の椅子は重い。騎士団のトップとして、全ての騎士の命を預かる立場だ。オレの指示が間違えば、生き残れる騎士が死ぬことになる。全ての命を救えるなど、傲慢なことを思ってはいけない。冷静に冷徹に。どんなに激しい戦闘の中にいても、常に頭の一部は冷えていて、「最小限の痛み」を見極めて指示を出す。オレの仕事は、仲間を生かすことだ。しかし、切り捨てる形になった「最小限の痛み」も、そう思ってくれているのだろうか…。迷ってはいけない。ブレてもいけない。謝ることはできない。恐怖や焦燥を押さえつけ、余裕の表情で先頭に立ち、騎士たちを鼓舞するのがオレの役目だ。