羽夜side。はぁ。と息を吐けば、白色になって目の前に現れるそれを、私はただ見つめていた。目を閉じれば、瞼に伝わる冷たい空気。あぁ、またこの季節がやってきたんだ、と感じることができるこの感覚が、私は昔から好きだった。その中でも一番好きなのは、真っ黒な空に美しく輝く星たちだった。小さい頃からこの季節には空を眺め、幸せを感じていた。私はつまらない人間だったから、それしか幸せを感じることができなかったんだ。いや、それしか知らなかった、という方が正解かもしれない。仕事が終わり、帰り道。電車に乗って家まで帰る。駅から家までは街灯がたくさんあるわけでは無いから、星が綺麗に見える。『・・・オリオン座。』簡単に見つけることができたそれをただ眺めていた。今日も、また1人。友達がいない訳では無い。でも、1人で上京してきた私は、なかなか仲がいい友達を見つけることができなかった。もちろん、恋人なんて人もいなかった。運命なんて、言葉だけ。こんな私にはまるで当たり前かのように該当しない“運命”という言葉に苛立ちを覚えては、こんなのに苛立ちを覚えている私が情けなく、惨めに思えた。カップルとすれ違うのには慣れた。もうすぐ、家につく。星を少し眺めてから家に入ろうかな・・・。そう思い、マンションの前で立ち止まり、星を眺める。はぁ。白い息が邪魔をする。これがため息だなんて、私には考える余裕もなかった。