ショッカーのアジト。その通路を二人の女怪人が歩いていた。
ドクダリアンとサラセニアンは、談笑しながら会話に花を咲かせている。
「それでね。アツコちゃんがこの間の任務で素体を誘拐したのよ。それも一人で」
「アツコちゃんは相変わらず頑張り屋さんね」
サラセニアンもドクダリアンも美人だ。
スタイル抜群な上に、顔の造形も悪くない。肌が異色に染まり、葉や花弁が飾る身体は異形ながらも、それ故の美しさを誇っていた。
当然のように通路をすれ違う戦闘員や科学者は何人も振り返っていた。
そんな男達に二人の女怪人は妖しい笑みを返した。うっかりドクダリアンがフェロモンを発したらしく、何人かが前屈みになったが。
やがて二人は広い空間に辿り着く。そこは改造人間達の戦闘訓練を行うフロアだった。
早速戦闘訓練を行うために、サラセニアンは手に鞭を出現させ、ドクダリアンは花弁を蠢かせてフェロモンガスを発散させる準備をする。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ。お二人さん相変わらず美人だな」
天井から聞こえたその声に、二人が視線を向けると、天井からぶら下がった怪人が両の翼をはためかせて床に舞い降りた。
「蝙蝠男さんですか。褒めてくれてどうもありがとう」
蝙蝠の改造人間にサラセニアンは素っ気なく挨拶し、ドクダリアンも続く。
「ふふっ。悪いけど、怪人や戦闘員と勝手に関係を持つことは禁じられてるの。ごめんなさいね」
「ヒャッヒャッヒャ相変わらずお二人さんは手厳しいな」
ショッカーの吸血怪人、蝙蝠男は気味の悪い鳴き声を出しながら、二人の身体から目を離そうとしない。下心を持っていることは明白だった。
「なあ、ところであんた達を改造したのは綾小路博士でいいんだよな」
「ええ?そうですけど」
「ふーむ。やっぱり女だけあって女の改造はお手の物か……」
蝙蝠男は一人で頷くと、そのまま訓練フロアから出て行った。
あとにはきょとんとした表情のサラセニアンとドクダリアンが残された。
椅子に座るレオタードの上に白衣を身につけた女性は、目の前の怪人に向き直った。
「え?自分と同じタイプの女性改造人間を作って欲しい?」
突然自室を尋ねてきた蝙蝠男の頼みに、ショッカーの科学者、綾小路律子はふむ、と頷いた。
「俺だってそれなりにショッカーのために働いているんですよ。パートナーにきれいどころの一人ぐらいいてもいいでしょうが」
「へー。そんなにモテたい?」
いきなり本音を突かれた蝙蝠男は驚きながらも、頷いた。
「まあ、それなりには」
「ふーん……ねえ、蝙蝠男は元々音波による遠隔操縦型ヴィールスの蔓延を行うための改造人間よね」
律子からの質問に、蝙蝠男は頷いた。
「はあ。そうですが」
「ヴィールスを人体に注入するにはやっぱり人間の人体に直接注入する必要があるのよね」
「はい」
「ふーむ……元々人間蝙蝠タイプの改造人間は飛行のために、細身の女性の方が向いてるかも知れないし……」
律子は無言で椅子から勢いよく立ち上がると、コンピュータのモニターを起動させた。
モニターにはあらゆる怪人の素体として、適当と思われる人材のデータリストが映し出されている。
その内のリストにある一人のデータをクリックし、パーソナルデータをモニター上に映し出した。
「山野美穂。職業はモデル。これが顔と全身像」
モニター上には正にモデルに相応しい美女が、微笑みを浮かべて立っていた。
「ヴィールス散布用としてはそれなりだと思うけど、どうする?貴男が捕まえてくれれば、私がきっちり改造してあげるけど?」
律子の蠱惑的な笑顔に、蝙蝠男がどういう返事を返したのかは、言うまでもなかった。