「この先の事なんて分からない。だけどひとつだけ、確かな事はある」
「……ほう」
「俺は、ディオと一緒に戦うために、此処にいるんだ」
意思の強い真っ直ぐな眼差しが、中佐を射抜く。
ディオは息を飲みながら、青葉の言葉を聞いていた。
「一緒に、ね…。彼が今まで何をしてきたか知っても、そんな事が言えるのかい?」
「…どういう事だ」
「彼は上官命令ならば、誰にでも股を開くという事だよ」
今度は青葉が瞠目し、言葉を失う番だった。
青葉の背中に身を寄せているディオの体の震えも、酷くなっている。
何かに耐えるように、ジャケットの裾をぎゅっと握ってきた。
「そんな事も知らず、オママゴトな恋愛に興じていたなど傑作だな。養成所時代から、ディオは私の人形だった。その人形が、どこの馬の骨ともわからぬ輩に奪われるのは不愉快極まりない」
忌々しそうに吐き捨てた中佐が、青葉を睨み付ける。
「彼は、私の言う事なら何でも聞くんだよ」
「……」
「君の事を想いながら涙するディオを強引に抱くのも、実に一興だったな」
「…てめぇ!!」