「…ほら、ベッドに入って、眠って。余計なことはもう考えずに…。」陸の背中を軽く押し、ベッドに寝かせ布団を掛ける。 不安げな表情を崩さない陸の頭を安心して眠りに着くことが出来るようにと優しく撫ぜると、寝不足であろう陸は直ぐに眠そうに目を細めた。「…天にぃ…。」今にも瞼が下がり切ってしまいそうな陸だったが、最後の力を振り絞るかのようにポツリと一言口にした。「何?」 「…俺、もう迷惑かけないようにするから…だから……居なくならないで…もう、俺の前から…。」そんな陸の言葉に、思わず撫ぜていた手を止めた。陸は言うだけ言うと、スゥッと目を閉じてしまう。 安らかに眠る陸を見て安心しながらも、何故だか少しゾッとするような寒気を感じた。「…どこにも行かないよ、もう…。」撫ぜるのを再開しながら、小さく呟いた。昔から変わらない陸の寝顔を見ながら暫くそうしていたが、手を止め陸の額から手を離すと、ポケットから自身のものでは無いスマホとイヤホンを取り出した。投げ捨ててバキバキに粉砕してやりたい衝動を深呼吸をしてどうにか抑え込み、イヤホンを刺すと、忌まわしいそのスマホの画面を開いた。