先程まであんなに表情豊かだった彼女が嘘であったかのように感情が抜け落ちたような虚ろな表情に恐怖を抱いた。しばらく続いた沈黙に耐えられなくなったと同時に彼女が私を見る。「オレから、天にぃを盗ろうとしたの?」 「えっ、べ、別に七瀬さんから取ろうとしたわけじゃなくてっ・・・」 「盗ろうとしたんだよね?だって、告白したんでしょ?天にぃを自分のものにしたいから。ねぇ、」 「ヒッ・・・な、なにっ・・・」 「振られて良かったね。天にぃがあなたのこと守ってくれたんだ。」それまでのことがなかったかのような花が咲いた満面の笑みに、私の中に植え付けられた恐怖は拭えなかった。彼女はそれだけを最後に残して出て行くと、私は緊張が解けてへたり込む。一体何だったのだろうと考えても彼女のあの表情が頭から離れなかった。