スピードが落ちた瞬間を見計らって僕は転げ出るように車から出てさっき陸がいたところまで全力で走っていった。人ごみが邪魔だけど視界に陸の姿を捉えることが出来てさらにスピードをあげる。 「陸!!!」 僕の声にハっと顔をあげたあの子は案の定泣いていた。 まだ距離があって声は聞き取れないけどその唇は確かに(天にぃ)と紡いでいた。信じられないというようにただでさえ大きい瞳をさらに見開いてこっちを見ていた。そして走っていたスピードを段々とゆるめて足を止めた。陸の目の前にようやくたどり着いた。近くで見るとやはり陸は泣いていた。目尻や鼻がほんのり赤くなってしまっている。 「陸・・・ごめん・・・ごめんね。泣かないで。」 もっと色々言えただろうに口からでたのはシンプルすぎる言葉たち。普段は自分でもよく回ると思う言葉が思考がこの子の前では全く機能しないのをこの時ほど痛感したことはなかった。 「天にぃ・・・よか・・よかった・・・無事で本当によかった・・・。」 そういって泣きながら抱き着いてきた陸を僕はそのまま受け止めた。いきなり出て行ったから怒られるかなと思って覚悟してたのに最初にかけられたのは心からの心配と安堵の言葉で 本当、敵わないなとポンポンと昔よくしてあげたように背中を叩く。 「ごめんね、何も言わずに出て行こうとして・・・・。」 陸が僕の胸元に顔を埋めたままこっちを見ようとはしない。 「天にぃのバカ・・・本当に心配したんだ・・・父さんも母さんもまともに取り合ってくれないし。どこ行っても見つからないし。何があったんだろうって、何か悩んでたのかなとか、俺何かしちゃったのかなとか凄く凄くいっぱい考えて、ずっと胸が痛くて、このまま見つからなかったらどうしようって・・・っ・・・。」