僕の何気なく漏れた本音にビシッと姉鷺さんが隣で凍りつく気配がした。「やだな、冗談ですよ冗談。弁護士の先生のことありがとうございます。 早急に対応をお願いしますと伝えておいて下さい。」「はいはい。天が言うと冗談に聞こえないから怖いわ。 前から思ってたけどあなた実は楽より沸点低いわよね。」そうこう話しているうちに高速で飛ばした甲斐もあって 仕事先には予定どおりに着くことができた。今日はこの後TRIGGER3人揃っての仕事だ。メイクや着替えもあるから先に僕だけ車寄せで降ろしてもらった。「顔、だいぶマシになったわね。仕事中は九条天であること忘れたらダメよ? 夜また病院に行くのよね?」「はい。あ、タクシー拾っていきますから車は大丈夫です。 今朝は我儘きいてくれてありがとうございました。」「わかったわ。先生もお忙しいでしょうからすぐ対応していただけるか分からないけど 夜、弟君に会いに行くときにいい報告出来るよう掛け合ってみるわ。 だから安心して貴方は貴方の仕事。目の前の仕事しっかりこなしてきて。」マネージャーはいつも自分の仕事をしてるだけっていうけど、本当にこの人は凄い。僕らが一人一人仕事を思いっきりできるようにありとあらゆる面、方法で、ケアしてフォローしてくれる。「姉鷺さん、ありがとうございます!行ってきます!」駐車場へ向かった姉鷺さんに手を振り、僕は楽屋へと向かった。姉鷺さんの仕事ぶりに応えるためにも僕は今僕がすべきことをしなければ。また、夜になったら兄の顔に戻れる。また会う約束をした。大切な人との約束を胸に抱えて進む一歩は 先に待ち構える様々な問題をものともしない強さを僕に与えてくれた。そして気づけば日は沈み、待ちわびた夜が訪れた。