陸と来た場所は小さな公園。 遊具は滑り台のみ。 ここで遊ぶ人はあまり見かけない場所。 そんな場所でもボクの思い出の場所。「ここ、覚えてる?」 「忘れるはずないよ!だってここはオレの大好きは場所だもん。」 「今思えば、ここがアイドルの原点だったのかもね。」 「それじゃあオレが天にぃのファン第一号だね!」ここをステージに見かけて、陸の前で下手なダンスと歌を披露していた。 テレビで見様見真似のダンスを覚えて。 オリジナル曲を子供ながらに作ったりして。 今はもう覚えてないけど、下手ながらも一生懸命だった。 陸が笑ってくれるから。 元気になってくれるから。 「てんにぃすごいね!」なんてボクを褒めるから。 ボクを尊敬してくれるから。 大好きな天にぃでいたいから。「〜♪」 「!?」まるで優しさに包まれるような声だった。 そしてこの曲は…。「陸、その曲…。」 「天にぃが昔、歌ってくれたでしょ?ちゃんとダンスだって覚えてるよ。」 「ふふっ、おかしいね。一生懸命に練習したボクが忘れてるのに陸が覚えてるなんて。」 「忘れるはずないよっ!だって天にぃがオレだけのために歌ってくれた曲だもん!」 「!」嬉しいような恥ずかしいような。 むず痒い気持ちになる。 陸はいつも真っ直ぐで、純粋で。 時には心配になるぐらい素直で。「天にぃありがとう!大好き!」大好きという言葉に恋愛感情などないと分かっているのに。 ドクンと胸が高鳴った。「ボクも。」陸が好き。 でも、陸とは違う意味で。 兄弟とか、家族だからじゃない。 "愛おしい人"という意味で、だ。「ねぇ、陸は何したい?」 「え?」 「陸がやりたい事を教えて。」 「うーん…。」陸とベンチに座り、穏やかな時間を刻む。 ボクは昔みたいに陸の隣にいたい。 同じ時間をずっと一緒に過ごしたい。 陸はそれを望んでくれるだろうか?「ない、かな。」 「え?」 「もう叶えちゃったから。」意外な答えにキョトンとしてしまう。 陸はニコリと微笑み、「オレが出来ることはもうないから。」なんて言う。 それってどういう意味?「ねぇ、天にぃ。もう少し歩かない?」 「いいけど…。」日が暮れ始め、周りには人がいなかった。 一歩ずつ、陸の隣を歩く。 同じ歩幅で、同じ速さで。