わぁ~、すっごい! おしゃれだね!」 彩は入る前から店の外観の写真を撮ったり、入ってすぐに店内を撮ったりしている。「ええ、そうね。とても落ち着くわ」「いらっしゃいませ、二名様ですか」「はい」 店員に案内され席につくと、対して何もしていないのにようやくひと段落した、そんな気分になった。 メニューを楽しそうに眺める彩。紗夜はその様子を眺めているだけでも幸せだった。「うーん、何がいいかなー……あっ、見て紗夜ちゃん! このケーキ美味しそうだよ!」「本当ね。でも、こっちの方も美味しそうだわ」「たしかに……! うぅぅん……迷うなぁ……どっちがいいかな……」 メニューとにらめっこする彩の姿を見てくすりと笑う紗夜。「それなら、私がこのチョコレートケーキにしますから彩さんはチーズケーキにしたらどうですか? それで交換もしましょう」「え!? いいの!?」 それを聞いて目を輝かせる彩。「もちろん。それに私もどちらも食べてみたいですし」「あっ、でもそんなに食べても大丈夫かな……」 彩の脳裏に一人の顔が思い浮かぶ。「たまにはこうして息抜きするのもいいんじゃないかしら」「うーん……そうだよね! たまにはいいよね……! このことは内緒で、ね……?」 可愛い恋人のお願いだ。もちろんノーとは言えない。「ええ、もしもの時は私から言っておきますから」「ありがと~~!!」「いえ、大事な恋人のお願いですから」「……! いきなりそんなこと言うのって反則だよ~……」 少しいたずらに言って見せた紗夜を前に彩は恥ずかしさで俯いてしまった。「そうね、彩さんは飲み物はどうしますか?」「あっ、じゃあレモンティーにしようかな」「わかりました」 そう言って紗夜は店員を呼び、手際よく注文をした。「紗夜ちゃんは珈琲が好きなんだね」「まぁ、珈琲は好んで飲みますね」「しかも、ブラックで飲んでるよね。お砂糖とミルクがないと私は苦くて飲めないよ~」