「……あ、先輩あれです。あの建物がドルフィンファンタジーっていって、イルカのトンネルがあるんですよ。上から太陽の光が差し込んで、すごくロマンティックなんですって」テーマパークとやらに入り少し歩いていると、目の前に青いドームが現れる。珠紀は、それを指差して言った。……イルカ。そうか、こん中にイルカがいんのか。そーいや、イルカを生で見るのも初めてだな。しかし、『イルカのトンネル』って、一体なんだ……!?「うわーっ!! でけえぇぇっっ!!」ドームの中に一歩入った途端、俺は思わず大声で叫んだ。「珠紀、すげえっ。イルカがアタマの上泳いでんぞっ!!」俺は立ち尽くし、天井を見上げる。透明に見えるあれはガラス……ガラスか? ガラスの上に、イルカが泳いでるプールがあって……「なあ珠紀っ。なんであのガラスは割れねえんだ!?」「……だから、大丈夫な設計になってるんですよ……」「うそつけえっ。歩いてたら、割れてあのエイが落ちてきたりすんだろおっ」「……」「すっげー!! でっけえなあ、おい!!」珠紀は何故か無言になって、俺の前を歩き出した。「おい、なに先に行ってんだよ!」俺は珠紀の後を追う。イルカのトンネルを抜けた後には、また別の水槽があって……「珠紀っ、すげえ! あの中でイカが泳いでるぞ!! イカって泳ぐんだな! 俺、食ったことしかなかったっ」「……先輩って、バカですか」「なんだオマエ、俺をそんな風に思ってたのか!?」「……」珠紀はなんだか、それ以降あまり返事をしなくなっちまったが。俺はずっと、生まれて初めて見るウミガメや、動くエビやカニに興奮しっぱなしだった。