ついにあの子が、僕のたった一人の弟 たった一人、同じ血肉を分け合った片割れ陸が、旅立った。 あまりにも、早すぎる死。 まだ成人すらしてない僕ら。普通なら死なんて遠い先の話だと笑い話に出来てしまうような年齢だ。でも僕らは違った。陸は生まれた時から呼吸器系を患っていて発作が起きれば常に死と隣り合わせ。いつかこんな日が来るのかもしれない。少しでも「その時」が来た時耐えられるように僕は最悪を想定したこともあった。でもそんなことを考えてしまった自分が許せなくなってすぐにやめた。実際直面した死はとても静かなものだった。劇的な死なんて早々起きない。静かに、風が吹き抜けるようにそっと、 でも確実に死は陸を攫った。 眠るように息を引き取った陸。 深くこんこんと眠り続けてるだけじゃないかと思いたかった。このままその穏やかな顔を眺め続けたら 大きな目を縁取る睫毛が揺れ、 閉じられていた瞼の下から僕が大好きな夕陽色の瞳を覗かせてくれるのではないかと 錯覚しそうになるくらい綺麗な顔。頬に手を添えれば温もりだって感じられる。 でもどんなに僕が心の底から陸の名前を呼びかけても、 その手を握りしめても、 僕の目から溢れ出した涙が1粒、 また1粒と零れ落ちて陸の頬を濡らしても 陸が再びその目を開けることはなくて あぁ、、、本当に逝ってしまった。と思った。僕を置いて。1人で。いつも当たり前にそばに居た。名前を呼べばいつだって笑顔で振り返ってくれて 僕の名前を呼んでくれた君が隣にいない。こんな気持ち知りたくなかった。 終わりのない底なしの寂しさなんて知りたくなかったよ。逝かないで、傍にいて、僕を置いていかないで 言えなかった言葉が今更溢れ出す。僕はもう届くことがない言葉たちを 涙と共にただただ湧き上がるままに溢れさせた。そうでもしないと僕の心は今にも壊れしまいそうだったから。 散々涙を流して、心の底に押し込めていた想いを物言わぬ片割れに語り明かし、最後にはプツリと糸が切れた操り人形のように泣き疲れて意識を手放した最期の日。 それは数日前のこと。