スーツを半分脱いだ状態で、あんな無茶な攻撃をしたのだ。攻撃の余波によるダメージもさることながら、生命力を放出し過ぎて衰弱死してしまう恐れすらある。 どうしよう、もし仁が死んじゃうようなことがことがあったら……! 桃は恐る恐る仁の身体を抱き起こし、呼び掛ける。 「大丈夫!? ねえ、しっかりして!」 桃の呼び掛けに仁の頬がぴくりと反応する。仁は虚ろに目を開き桃と視線をかち合わせた。 「も、桃……」 「仁、しっかり! 死んじゃやだよぉ!」 「……………………ね、眠い……!」 「……へっ?」 仁の呟いた言葉に、桃は思わず間抜けな声を返してしまう。 「わりぃ……すげえ眠くて……ちょっと、寝るわ……」 仁は瞼を落とし、そのまま桃の膝の上ですやすやと静かな寝息を立て始めた。 予想外の事態にしばし固まっていた桃だが、すぐにハッとして仁の寝顔を覗き込んでみる。その顔は存外穏やかであり、血色も良かった。どうやら最悪の事態を心配する必要はなさそうだった。桃はホッと安堵のため息をつく。 「……よかった、本当に……」 桃は幸せそうに眠る仁の頬にそっと手を当てる。仁の頭がくすぐったそうにもじもじと揺れた。 仁の寝顔を見ていたら、桃もなんだか緊張が解けてしまった。戦いも終わったことだし、落ち着いた気持ちで今日のことを振り返ってみる。 今日一日だけで、仁のいろんな顔を見た気がした。良いところも、悪いところも、優しいところも、腹が立つところも、みっともないところも、かっこいいところも……。 なにより桃のために怒ってくれたあのときの姿を思い返すと、桃は胸が熱くなるのを感じた。顔が綻んでいるのが自分で分かる。仁が激昂戦隊のリーダーに任命されている所以が、なんとなく分かった気がした。