インピカがスタンプを百個貯めて、ユウの城へ遊びに行ったことは、瞬く間に子供たちへ広まった。そこでの夢みたいな出来事をインピカはこれでもかと語ったのだ。そうなると、子供たちは次に行くのは自分だと、お手伝いを今まで以上に頑張り始めたのだ。ユウも忙しい身である。すべての子供たちの相手をするわけにはいかない。そこで考案したのがスタンプ五十個と交換できる銀のアクセサリーである。男の子たちには動物シリーズ、女の子たちにはお花シリーズと称して選ばせるのだ。これが子供たちの間で大ヒットとなる。「オレのはどうぶつシリーズのオオカミなんだ」 バッチの造形は、とても子供向けとは思えないリアルな狼の顔であった。(ぐっ……。カッコイイじゃねえか)「それにこれみて」 狼人の男の子は服からバッチを取り外すと、裏側をタランに見せる。そこにはナンバーNo.0と刻印されていた。「いちばんさいしょのやつだけ、王さまが作ってくれるんだ。つぎのからはだーくぞくのオトナが作るんだって。だからこれはレアなんだ」「わたしのはお花シリーズなんだよ」「オレはクマなんだぞ」「ボクね、リュウをおねがいするんだー」 キャッキャッと盛り上がる子供たちとは裏腹に、タランは羨ましくて仕方がなかった。「俺もそのスタンプとやらを貯めれば貰えるのか?」「「「ダメだよ」」」「なんで?」「お手伝いスタンプは、子供だけなんだよ」「そうそう。オトナはダメなんだよねー」「なんだよそれ! 大人だってお手伝いスタンプとやらを貯めてもいいだろうがっ! あーあ、ほんっと王様ってガキに甘いよなー」 子供たちにダメと言われても諦めきれないのか。タランが不貞腐れたように呟く。「いいだろ?」 狼人の男の子が、再度バッチをタランに見せつける。キラキラに輝く銀でできた狼のバッチがタランの目には眩しく映る。これから時間の経過とともに、銀のバッチはくすんで良い色合いになっていくのだろう。それを想像するだけで、タランはバッチが欲しくて欲しくてたまらなくなるのだ。