紗夜の卒業式が間近に迫ったある日。燐子先輩から『友希那ちゃん、これ、氷川さんの飛行機の時間と、それに合う電車の時間なんだけど......お節介かもしれないけれど、よければ使って』とメッセージがきて、はっとする。隣にいたリサも私の携帯の画面を見て「これ......」と呟く。時は流れているのに、私は紗夜の事ばかりを考えてしまって、全く前に進めていない。フラれたというのに、一年近く経つ今でもやり直したいと願っている自分を変えられなかった。紗夜に会いたい。やり直せるかはわからないけれど......それでも。もう一度だけ隣にいたい。「友希那......行くの?」「......迷惑かもしれないけれど......行きたいわ」「そっか」リサはそれだけ聞いて、笑ってくれた。ーーー卒業式も終わり、紗夜の旅立ちの日。私は燐子先輩からの路線図をたよりに、空港までたどり着いていた。たくさんの人で溢れた空港の中、私は必死に紗夜を探した。そして十分ほど、空港を歩き回ったとき。「友希那......?」私の後ろ側から、紗夜がやって来た。もう荷物は預けているのか、紗夜はほぼ何も持っていなかった。「......紗夜」私は名前を呼ぶことしか出来なかった。会いたいと思って来てはみたものの......いざ会ってみれば、何も言葉が出てこなかった。「久しぶりですね」紗夜が昔のように、優しい笑顔で笑ってくれる。「久しぶり、紗夜」私も、昔のように笑えていた気がする。「見送りにきてくれたのですか?」「ええ、燐子先輩が時間を教えてくれたから。迷惑だったなら......ごめんなさい」「......いえ、嬉しいですよ」