「す、すごい…」 神來の口から、思わず感嘆の声が漏れた。 映画でしか見たことのないような高価な家具に囲まれた部屋を、神來は呆気に取られる。まさか近所にこんな素晴らしい家があるなんて、夢にも思わなかった。 そう思う神來に鈴奈は微笑みながら、ソファに腰掛けるよう促す。それを見た神來は遠慮しがちにソファに腰を下ろした。フカフカしていて、体が包まれているようだ。 相次いで、神來と鈴奈の目の前のローテーブルに紅茶が出される。鈴奈はそれに口をつけながら微笑んだ。「この銘柄は私のお気に入りなんです。数珠さんもよければ飲んでみてください」「は、はい!頂きます…!」 ギクシャクとしながら神來は高価そうなティーカップを手に取り、紅茶を控えめに啜る。「…!お、おいしいです!」「お口に合うようで良かったです。おかわりもありますので、是非」「はい、ありがとうございます!」 癖のない飲みやすい紅茶が、神來の渇いた喉を潤していき、簡単に1杯飲み干してしまった。神來はハッとして、はしたない所を見せてしまったと恥ずかしがるが、鈴奈は気にしていないように微笑む。神來は紛らわすように話題を切り出す。「そ、そういえば宝条さん!私に何のお話が…?」「ああ、そうでしたね。文化祭のお仕事を手伝って頂きたいと思っていたのですが…」 鈴奈は紅茶を一口飲み終えると、息を吐いてポツリと言葉を漏らす。「それは建前ですので」「……え?それってどういう、事…っ!?」 神來の首元でバチンッ!という音が響く。体がビクリと跳ねると、そのままぐったりと力が抜け、ソファに身を委ねた。 薄れゆく意識の中で、鈴奈の口がニヤリと歪んでいるように見えた。