キィと天の部屋のドアが開く音がした。天は怒りと陸に酷いことを言った後悔で眠れなかった。最後にちらりと見た陸の瞳は悲しみで揺れて涙の膜が張っていた。きっとあの後陸の瞳からは涙が流れたに違いない。その涙を拭いたかったけれど自分が泣かせたのだ。天の心境はぐちゃぐちゃだった。怒りもあるし陸を離したくないし。前からずっと思っていた。自分と陸のすきには温度差がある。ギッと天のベッドが音を立てる。天の上に誰かがくっついて寝ている。そんなの誰かなんて聞かなくてもわかる。ベッドサイドのテーブルランプをつけると明かりが灯り陸のつむじが見えた。ふわりとシャンプーのいい香りが天の鼻を掠めた。使っているシャンプーは同じなのに甘くくすぐったい。 「陸」 「…」 「何してるの」 「夜這い」 「…陸」 「うそ。ごめんなさい。天にぃ」 ズッと鼻をすする音が聞こえる。髪をゆっくりと優しく撫でると陸の身体がぴくりと反応した。陸は顔を上げ潤んだ真っ赤な瞳に天を写す。 「なんで合コンに行ったの?」 「…」 陸はまた天の胸元に顔を埋めた。感情的にならないように天は優しく陸に問う。 「友達に誘われたの。ずっと彼氏が欲しいって言ってたのに行く友達が急に来れなくなって…。お願いされて断れなくて」 「それボクに言ってくれたらよかったんじゃないの?」 「…ごめんなさい」 「ボクが陸の立場だったら陸はどう思う?」