「はい、明日は狩りに行くつもりです。今日は時間が短かったので、手に入った肉の量が少ないですから。それにこの町の警戒網も若干考え直さないといけないので。 明日、警戒網を外から調整して、更にファングのレベリングも兼ねて数日分の肉と、ゴブリンやコボルトを狩る予定です」「ウォン!」「ヴァンダルーもファングも、頑張ってね。でも、忙しかったらお母さんが狩りに行って来てもいいのよ?」 ダルシアはどのギルドの登録証も持っていないが、隠れ里で暮らしていたダークエルフだと町の人達には思われている。そのため彼女が、D級冒険者が狩るような魔物を狩って来ても不自然に思う人よりも、「里では優秀な狩人だったのだろう、流石ダークエルフ」と思う人の方が多いはずだ。「それもそうですね……じゃあ、ファングのレベリングが一段落したら願いします」「ええ、任せて」「串焼き一つ」 会話をしている間にも、まばらに客がやって来る。ヴァンダルー達の屋台はこの一週間の間に、美味いと評判になり、『飢狼』の関係者以外にもそれなりに客が来るようになっていた。「はい、一串で三バウムです」「え? 値下げ?」 客は昨日まで五バウムだった串焼きが急に値下げされた事に戸惑いつつも、三バウムを払って串焼きを購入。そして表通りに戻りながら、改めて串焼きを観察した。(肉の量は変わってないか? いや、ちょっと増えてる。じゃあ、質が落ちたのか?) そう嫌な予感を覚えつつ肉に齧りついた瞬間、客はそれが間違っていた事を知った。味が、明らかに上がっていたのだ。「うまっ!? 何で安くなって量も変わっていないのに、美味くなっているんだ!? も、もう一本っ!」 一度は表通りに戻りかけた客は、身を翻してもう一本串焼きを購入していった。(……仕入れの方法を変えましたからね)