改めて目を見て、語りかける。 「私、今まで治療費とか入院代とかでいっぱいお金かけてもらったもん。これ以上迷惑かけられないよ。高校に入るのだってタダじゃないんだし」 「でも…!」 「大丈夫。私、病気を経験したおかげで、ちゃんと丈夫に育ってるから!」 「陸……」 ガッツポーズを取って、元気さをアピールする。 母さんが目を閉じて、困ったように笑みを浮かべる。納得して貰えたようで良かった。 「分かったわ。今すぐ休学手続きをしましょう」 「うん!…って、え?」 突然の提案に耳を疑う。 「母さん、話聞いてた?」 「聞いてたわよ。要するに陸は、金銭的な負担が気がかりなのよね。それならそこは妥協する。ただし、陸を攻撃する連中と一緒に残りの学校生活を送らせられないわ。だから休学。留年して、年下のクラスに移りましょう。休学なら授業料も免除されるし、陸も今のクラスで過ごさなくて済むし」 「ちょ、ちょっと!留年って…この学校のみんなに、天にぃの話は出回ってるから…」 「大丈夫。もし学年が変わっても陸をいじめるような奴がいたら、まとめて警察に告訴するから。今は追及しないけど、後でちゃんと今日の犯人の名前は教えてもらうから、その子達も一緒に…ね?」 淀みなく、言葉を紡いだ母。 笑顔なのに、声も明るいのに、有無を言わさぬ迫力だった。 「母さんって…天にぃに似て過保護だよね…」 「私が天に似てるんじゃなくて、天が私に似たのよ。よし、じゃあ帰りましょう」 母さんは保健室の先生とやり取りした後、職員室に向かい、担任の先生に話をつけ、あっという間に休学手続きを完了してしまった。