思ってもみない謎の質問に声が上擦ってしまった。だけど白鷺さんの横顔は至って真面目で、でもどこか切なそうで。もちろん心中なんて読めるはずもない。 その横顔はこちらを向き、私を真正面に見つめると、いつもの品のある笑顔でにこりと微笑んだ。「もしよければお茶して行かない?」「いいですけど……」 謎の質問が気になる中、この雨をしのげるのならばと素直に誘いに乗った。家に帰るのは気が進まない自分が少なからずいたから。 ついて来てと言われるがまま雨の道を進み、再び制服を濡らした。 あの秋時雨も、今日みたいな土砂降りだった。◇「ちょっと、聞いてるの?」「えっ? すみません、聞いてませんでした」「はぁ……」 少しだけ前のことを思い出していると、いつの間にかファミレスの席に座っていた。メニュー表を手に持ち、不機嫌そうな顔でこちらを見つめる白鷺さん。どうやら早くメニューを決めて欲しいらしい。慌ててドリンクバーとポテトを注文すると、二人で飲み物を取りに席を立った。「……最近どうしたの?」 紅茶の茶葉にお湯を注ぎながらも急に脈絡のない質問をしてきたものだから思わずぎょっとした。心当たりはあるけれど彼女にそれを言った訳でもない。何が? と答えれば先に席に行ってると言われたからよく分からない。何かと鋭い彼女のことだから私の心当たりに何か気づいたのかもしれないけれど。 自分のホットコーヒーを注ぎ終わると彼女が待つ席へ心して戻った。すぐさま何か聞かれると思って身構えてはいたものの、その目はスマホへ向けられていて肩透かしを食らう。どうやら茶葉の蒸らし時間を正確に計っているらしい。私はそういう真面目なところが彼女に好感を抱く理由の一つだったりする。常識があって厳しくて、どこまでも現実的で。きっとこういうのを波長が合うと言うのだろう。同じクラスになって一緒にいる時間が増えて、彼女といるとどこか気が落ち着くことが多くなっていた。しかし、今回のような鋭さを持ち合わせている時はなかなか怯んでしまうけれど。 やがてタイマーを止め、茶こしを丁寧に取る様子を横目に私は先にずずずとコーヒーを啜った。「……できた。……はぁ、美味しい」「紅茶もコーヒーもベストな状態で飲むに限りますよね」「えぇ、本当に」 コーヒーカップをソーサーに置けばカチャと音が鳴り、窓を打ち付ける雨音が耳に入った。