『だが、先程十柱で仕掛けた時、手応えがあった! 戦えている、このままいけば勝てると言う手応えがな!』『今から動ける者全員、約二十柱で追って仕掛ければ、今度こそ奴らに勝てるはずです』 そう訴える二柱に、ゴーンは眩暈を覚えた。その手応えのあった作戦を、何処の誰が台無しにしたのかと指摘したかったが、それをすると二柱が益々激高しそうなので、それは堪えた。『確かにそうだが、ヴァンダルー達は余裕を残していた。それに、グファドガーンの力で既に『転移』で何処かに逃げているかもしれん』 そう言うと、追っても無駄足になる可能性が高いとブラテオも理解していた。だが、それでも彼は納得できないようだ。『では、この隙を突くようアルダに進言するのはどうだ! 奴が次にここやペリアが眠る地、アルクレムと言う人間共の街に姿を現したら、奴の拠点を……境界山脈の内部を攻撃するのだ!』『たしかに。神が通れぬ結界も、我々亜神ならば物理的に通る事が可能です。何なら、神々が育てている英雄候補とやらを抓んで持って行ってもいいでしょう。これなら――』『……本気で言っているのか?』 ゴーンはブラテオとマドローザの、現実味の薄い思いつきに溜め息を吐いた。 ブラテオ達の思いつきは、確かに実現できれば、そして勝てるなら、確かに有用な策だ。しかし、現実的には難し過ぎる。 まず、既に一度シリウス達神々はヴァンダルーに欺かれている。アルクレムに居るヴァンダルーを偽物だと看破できず、ゴーン達に合流するのが遅れてしまった。 神の目とは言え、地上を見る時は降臨でもしていない限り、信者の目を通して見る事しか出来ない。そのため、信者と同じように……人と同じ程度にしか見る事は出来ない。 再びヴァンダルーが姿を見せたとしても、神にはそれが本物かどうか、見分けがつかないのだ。町中にいるのは偽物で、実は境界山脈内部に本物がいる。なんて事も起こり得るのだ。