意識を失っている時、不思議な夢を見た。天にぃが泣いてる夢だった。ステージでオレの知らない笑顔で笑って、たくさんのファンの人に手を振り返していたのに、ステージから降りて、家で一人になった途端に、天にぃは泣いていた。泣きながら、陸、死なないでって呟いてた。何を今更って、夢の中でオレはそう思った。何を今更、オレに生きてほしいなら、帰ってきてよって怒りたかった。でも、天にぃはただ、肩を震わせて、懐かしいキーホルダーを持って、陸、生きてって呟くだけだった。 意識が戻って、テレビをつけた。雑誌を見た。天にぃがいた。七瀬天でも、九条天でもない。天にぃがそこにいると、ただ、そう思った。 父さんに頼んで、父さんに預けていた天にぃから貰った物を全て病室に持ってきてもらった。今まで、気が付かなかった。夢に出てきたあのキーホルダーだけ、なかった。13歳の誕生日、オレが天にぃにあげた日記帳を今オレが持っているように、天にぃがオレにくれた双子の子犬のキーホルダーを、今天にぃが持っている。きっと天にぃは家を出ていく時に持って出ていった。 どうして、天にぃはステージに立ち続けるんだろう。夢の中で泣いていた天にぃは、オレの願望か、本当に泣いているのか、どっちだろう。でも、この日記帳の最初を見ると、本当に泣いてるのかなって、そう思う。 天にぃは、今、何を見ているんだろう。何を思っているんだろう。くよくよしていちゃ、だめだ。病気を理由に、天にぃに置いていかれた悲しみを理由に、泣くだけじゃ、絶望するだけじゃだめだ。天にぃを追いかけなきゃって、そう思ったよ。"「……追いかけてこないでほしかったよ、ボクは」