他にもいるのか? ――重い……助けてくれ……。 ってマジで重いんだけど! 俺は暗い中、目を覚ました。すると目の前には森猫の顔が……。「なんだ、お前かよ。重いんだけど」「にゃぁ」 そう言うと俺の顔に右手を乗せてくる。いや右手じゃないか右前脚だ。「なんだなんだ」 俺が身体を起こすと彼女はベッドから降りて、ドアの前に座ってこちらを向いている。 どうやら外に出たいらしい。「解った解った」 ちょっと肌寒い中、毛布を巻いてドアを開ける。 外はまだ暗いが、少し明るくなっているようで色が黒から青に変わりつつ――。 一面に薄い霧が発生していて遠くの方が白くなり、立ち並ぶ巨木が溶けて消えている。 森猫がそのまま霧の中へ消えていくのを見て、彼女達の朝は早い事が解った。「ふぁぁぁ」 明るくなったら起きるのがこの世界だが、さすがにまだ時間が早い。まだ眠いわ。もう一眠りする事にしよう。 プリムラさんの方を見ても安らかな寝息を立てている。 それにしても俺が若い時に結婚していれば、このぐらいの娘がいてもおかしくはないよな。 しかし同じおっさんのよしみとして、こんな美人で出来た娘を他の男に取られるというのは、どんな胸の内なのであろうか? あのマロウさんの心中を察すると、気の毒すぎて俺は手を出す気にはならない。 しかし俺の行動も、ちょっと迂闊うかつ過ぎるかなぁ。 日本語が通じるのと、出会った人が良い人ばかりなので、日本の延長のような価値観で付き合ってしまっている。 隣店のアマナだって、人が良すぎるって言っていたしな。 たまたま出会った人々が良い人ばかりだったので調子に乗ってしまったが、そのうち詐欺や美人局つつもたせ等が、やってくるかもしれないな。 注意しなければ。勝って兜の緒を締めよ――ちょっと意味が違うか? ちなみに、ここら辺では――森を抜けるまでは喜ぶな――と言うらしい。 俺はベッドに入ると再び毛布を被った。