――確かに、観みえた くく、と自然と喉のどが震えた。 ゴズを斬ったときよりも。クリムトを踏みにじったときよりも。クライアを喰ったときよりも。ことによったら幻想種ヒュドラを倒したときよりも、歓喜した。 五年前には決して観みえなかった頂いただきが観みえた。剣聖のそれが観みえたのだ、双璧以下は言うにおよばぬ。 それはこの五年間が決して無駄ではなかったことの証だった。 そしてもう一つ、わかったことがある。おそらく剣聖は――御剣式部はこの五年の間、成・長・し・て・い・な・い・。 極点とは心装使いが到達できる最後の点、それ以上はないという境地。 言葉をかえていえば限界どんづまりということだ。百ある才能を百まで開花させた者に成長の余地はない。 この状態から脱するためにはレベルを上げるしかないのだが、レベルアップに必要なのは「己より強い相手」である。 だが、いったいどこに剣聖より強い相手がいるのだろう。己より強い相手がいないからこその最強。最強とは、それ以上レベルを上げられない者の称号なのだ。 あるいは幻想種であれば、剣聖のレベルを引き上げることもできるかもしれない。 だが、ヒュドラを討った俺すら今の剣聖には届かない。剣聖のレベルを上げられる幻想種など、それこそ――ああ、それこそ―― ――神を殺す竜くらいしか、いないのではないだろうか?