こほこほ。咳の間に、ひゅーひゅー嫌な音。 夜は嫌いだ。暗く冷たい部屋はオレを弱虫にしてしまうから。苦しい、寂しい、みんなに会いたい、……天にぃ。「……こほっ……だいじょうぶだよ、りく、いいこだね……りくはいいこ……っボクがいるからね……」一人きりのベッドの中、抱き締めるようにして震える肩を摩り自分に言い聞かせる。大丈夫陸はいい子だねボクがいるから――昔天にぃが言ってくれた言葉を何度も何度も繰り返した。「ひゅー……にぃ……ん……」なんだか眠くなってきた。このまま眠ってしまおう。きっと朝になればオレはまた理想の“七瀬陸”になれる。大丈夫、だってオレは、「……あ、れ……?」いいこって頭を撫でてくれたのは、誰だっけ?