「そういえばお前、名前は?」 「……さぁ…」 「さぁって、自分の名前も分かんないのか?」 なんだかんだと色々な手続きをし、正式にこのドールのマスターとなった楽は車を運転しながら隣に座る少年へと声をかけた。 「分かるわけないでしょ。君が勝手に付ければ?」 「てめぇ…そんな生意気な口ばっかきいてっとエリザベスとかアンドレアとか適当な名前で呼んでやっからな。」 「 ………… 首 」 「あ?」 「首の後ろに、製造者が掘った名前があるはず…。」 「首の後ろ?」 流石にそんな名前は嫌だと思ったのか、少年は素直に髪を書き上げうなじを向けた。 ちょうど赤信号で車を止めたのを良いことに、楽は細く折れそうな少年の首筋を覗き込む「typeTW……TEN……てん?番号か?いや、でもだったら数字で書くよな…これが名前か?」 「……そうなんじゃない?陸の首にもRIKUの刻印がしてあった。」 ガラスケースに眠りに付く前、正常に目覚めるかどうか、動作確認として職人の元で一度目覚めさせる時間がある。 その時に陸の首に刻印があるのを見つけた。──りく…?名前りくっていうの?── ──そうみたいだよ。ボクのはなんて書いてある?── ──……てん…てんって書いてある!じゃあてんにぃだ!── ──てんにぃ?なにそれ── ──だってりくのお兄ちゃんでしょ?だからてんにぃ!──「りく、と…てん……陸と天…」 このドール職人は遊び心を忘れていないらしい。洒落た名前を付けたもんだ。天と陸で双子のドールとは。 「まぁいい。じゃあ天、聞くがその弟の居場所の検討は付いてるのか?」 「……分からない……何も…ボクが眠っている間に勝手に連れて行かれたから……」 「マジか……」 それじゃあ探すにしても手掛かりも何も無いじゃないか。 先程の殊勝な態度とは打って変わってシュンと落ち込む天の頭をくしゃりと撫で、楽は笑う。「まぁ落ち込むなって。龍と二階堂が良く行ってるドール保持者の会合みたいなものがある。そこでドールの情報を色々探ってみようぜ。」 「……うん。……ありがとう…楽。」 「お前な…マスターと呼べ。」 「は?呼ぶわけないでしょう?」 「てめぇ……いい性格してるぞ 」