尻尾のいやらしい膨らみが、先端部から少しずつ根元に向けて移動してゆく。「さ、さすがに……ちょっと、大きすぎる……かなっ……」 不安げな言葉とは裏腹に、期待と興奮の色を隠せていない。 そして、ついに嚥下されたコロナは臀部にある尻尾の付け根に届いたのであった。 柔軟に動く尻尾と比べ、その付け根はさながら子宮口のように硬く、狭い。「…………ゃ…………ぁ…………!」 驚くほど小さな穴に、コロナの頭部が押し付けられた。「あ、つぅぅぅっ……! きつっ、きついよぉぉぉっ……!」 産みの苦しみにも似た喘ぎ声が漏れ出る。 それでも尻尾は蠕動をやめない。 ぐぷぷっ、ずぷぷぷっと、 まるで別の生き物のように蠢き、本能を満たさんとする。「ふァ、くぅッ……! あぁ、通って……るッ……! 中に……きて……るッ……!」 幼い身体の腹部が、まるで妊婦のように膨らみ始める。 頭が通り抜ければ後は大したことはなかったようで、 腹部の膨らみはみるみるうちに大きくなってゆく――。 生暖かい粘液に満たされた暗闇の中、コロナは恐怖していた。 とうとう戻れないところまで来てしまったことを。 このまま消化液まみれになって、骨も残さず吸収されてしまうのだということを。(ドロドロなんていやだ! 死にたくない!) 残された力で肉壁を押すが、 弾力があるばかりでビクともしない。 何か手頃な道具で切り裂けないか探すものの、 あいにく武器らしい武器は持ってない。 それどころか、衣類や所持品の一切に至るまでが溶解して、 無くなってしまっている。『もう逆らったってムダよ。このままグズグズに溶けちゃいなさい』 何かが胃袋の外で優しく動いている。 おそらく、撫でているのだ……赤子の誕生を待つ、母のように。 だが、彼女が待ち望むのは誕生ではない。その逆だ。(くっ……粘液まみれだけど、万が一魔法が使えたら脱出できるかも……) 藁にもすがる思いで、ボコボコ音を立たせながら火焔術を唱える。(燃えろ……!) 手元に力が集まる感覚。 そのまま火球が現れ――るはずもなく。『ぁ……すごっ……身体中に……しみこんでくよぉっ……♪』 手元から熱が奪われてゆく感覚。 そして、サキュバス少女の甘い声。 ……魔力が形を持つ前に、サキュバスの胃袋に吸収されてしまっているのだ。『ふふ、ありがとう。わざわざ魔力を分け与えてくれて』(……この、バケモノが……!) もはや打つ手がないという絶望とともに、 そういえばなぜ相手の声が聞こえるのだろう? という冷静な疑問がコロナの中に湧き起こってくる。『知りたい?』 まるでコロナの心の声に答えるように返事がやってきた。『それはね――もう、あなたが私とひとつになりかけているってことよ』(なんだと!?)『そこはただの消火器官じゃないの。 私とあなたを霊的に結び付けて、少しずつ同化してゆくという魔法的な臓器…… って、一族の偉い人は言ってたわ』(つまりこうして話せているということは……す、すでに俺の身体は……)『身体はもちろん、魂レベルでもちょっとずつ私に吸収され始めているわね』(い、いやだ! ここから出してくれ! 魂まで吸収だなんてやだ!)『ムリ――だってもう、あなたを分解する準備、整っちゃったみたいだから』 ぐるるるるる……。 空腹時や食後に感じるような、消火器官が活動する音が響き渡る。 それに伴って胃壁が急速に縮み、新しい粘液が身体に絡み付いてくるのが分かる。 息苦しさが無くなり、心が急速に安らぎに染まる。 コロナの心身が、じわじわと多幸感に包まれてゆく。(なんだこの感覚は……いや、分かったぞ……これは『吸収する側』の……)『よく分かったわね。そう、私の感覚があなたに共有されているの』(……吸収される側の意識は共有されないのか?)『されてるわよ。でも今のあなた、もう絶望も抵抗もする気ないみたいだし』(ああ、言われてみればそうだ……) 胃壁が無慈悲に迫ってくる。 身体が変な方向に折れ曲がってしまうのではないかとコロナは懸念するが、 そもそも折れ曲がるべき身体が見当たらない。 彼女は自分がドロドロになってしまったことに気付いた。 そして、それを最後に何も考えることができなくなった。「……あ、なんにも聞こえなくなった……」 胃袋の中にあったコロナの意思反応が消えた。 彼女の心身は全て、生命と霊魂のスープとなってしまったのだ。 身体を揺らすと、胃の中でちゃぽんちゃぽんと波打つ感覚がある。 憎い相手が消えてせいせいする一方、凄まじい消化力だと自ら驚かされる。「もう少しいたぶってやりたかったけど……火事が迫ってるし、急がないと」 ドロドロに溶けた相手はすぐに吸収できると聞きかじっている。 彼女は胃袋に力を込め、コロナだった全てを自分に取り込もうとした。「んッ……!」 じゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ……。 みるみるうちに胃袋の膨らみが縮んでゆく。 その傍ら、全身が性感帯になってしまったかのような昂ぶりが湧き起こってくる。「あ……あぁ……ああぁぁっ……♪」 背中が反り返り、口がだらしなく開き、多量に分泌された唾液がこぼれ落ちてゆく。 そして――微塵も膨らみがない、絶壁だったハズの乳房に変化が起きる。 ぷくぷく、ムクムクとバストが盛り上がり、 あっという間に手のひらに収まる程度の綺麗な山なりをふたつ作り上げてゆくではないか。「あはぁぁ……♪ お、おっぱい……じんじん、するぅっ……♪」 サイズの合わないレオタードがぺろんとめくれ、乳房が外気に解き放たれる。 ツンと上向きになった乳首は、成長の快感で硬く勃起していた。「はぁ……はぁ……こ、これが……吸収、なのね……」 少しずつ体の熱が収まってきたところで、彼女はストンと地面に腰を落とした。「ん……? なんか安定感あるなぁ……お尻、大きくなったかも……」 よくよく見てみると、それだけではない。 イカ腹だったウエストはキュッとくびれを帯び、脚はよりスラッと伸びている。 彼女は、この数分で一気に2年ほどの肉体年齢を成長させたのだ。 それだけではない。彼女は全身にみなぎる魔力のみなぎりを理解した。「……ふふ、うふふふふ……あはははははははは……!」 自分は非力ではない。怨敵に一矢報いる力がある。「見てなさい、聖王府……あなた達、全員平らげてあげるわ」 少女は妖艶な笑みで、じゅるりと舌なめずりした。※転載元ではもう少し話が続いてエタったのですが、丸呑みじゃないのでちょっと保留します。