「どうして……?」「彩さん、今日は何の日か分かりますか?」「今日……? 今日は四月一日……あ……」 ようやく彩は何が起きているのか分かり始めた。「え? つまり、今日はエイプリルフールだから全部嘘だったてこと……?」「はい、そういうことです……ごめんなさい……」 紗夜は申し訳なさそうに、そしてなだめるような優しい声で謝る。「うぐっ……うぅ……」「彩さん……?」 彩はまた泣き出してしまった。「うぅ……ひどいよぉ……! さよちゃんのばか! うぅ、うえぇぇぇぇん、うあああぁぁぁぁぁぁぁん」「……ッ!? 彩さん!? ほんとうにごめんなさい……」「ひどいよぉ……ばか……!ばか……!さよちゃんのばかぁ……!」「そんなに馬鹿と言わなくても……」 紗夜は困惑する他なかった。謝っても謝っても彩が馬鹿と言い続けるからだ。 そして、彩は紗夜から体を離し、「さよちゃんさいてー……」 と、言い放った。頬を膨らませて怒る。そんな姿も愛らしい。しかし、今の紗夜にはその言葉が深く刺さる。「ぐっ……!」「どうしてこんなことしたの……?」「そ、それはですね……彩さんを見ていたら少しいたずらをしたくなってしまって……」「なんで……!?」 彩は何故そんなことを言われているのか分からなかった。「だ、だって、彩さんは反応が良さそうだったから……」「それって騙しやすそうってこと!?」 紗夜は気まずそうに黙り込む。「そういうことなんだ……」「でも、今回で懲りました……もう二度と彩さんを泣かせたくないので」「さよちゃんの、ばか……」 彩は顔を赤らめて言った。今のばか、は、少し嬉しそうに。「えぇ、馬鹿、ですね。私は」 紗夜は微笑みながら返した。「だから、もう絶対にあなたを離しません。今日のような思いは二度とさせません。だって――」 ――愛してますから 紗夜の愛の告白に、彩はさらに顔を真っ赤にした。「私も、紗夜ちゃんのこと、愛してる」 ――そうして二人は唇を重ね合った。