全員で話し合って、事務所とも連絡を取って。 天にしか、今の陸を揺らすことが出来ないと言う結論に、やっぱり至って。 三月が天と連絡を取ることで話が纏まり、ラビチャで陸のことで電話をしたいと三月が送った次の瞬間に、天から電話がかかって来た。 陸が眠れてないことと関係あるの?と、開口一番に問うたその声は、少しだけ震えていた。「やっぱり、わかってたんだな、九条」 そう三月が苦笑すると、仕方ないでしょ、と返される。 どんなに離れていても、どんなに蟠りがあっても、気になってしまうのは止められない。 それは、天が三月にだけ漏らす、本音だった。 同じ、兄と言う立場にある、アイドル仲間と言う特別な親近感を互いに持っているからこそ、天は三月には本音を漏らすことが増えていた。 三月は、今の陸の現状を、解る範囲で天に告げた。 陸が夜中に徘徊していること。 その事を陸は覚えていないこと。 誰が声を掛けても反応しないこと。 そして、天の名前にだけ、反応を示したこと。「…そう。で、ボクにどうしろって?」 「どうしろって、って…」 しかし、天から返って来たのは、素っ気ないほどの冷たい音だった。 三月や他のメンバーに、天に今すぐどうして欲しいと言う希望があった訳では無い。 ただ、話を聞いたら、天は陸をどうにかしようと動くとは、思っていた。 けれどその予想は外れていて、天は自ら動こうとする意思は無いと、言外に思いを乗せた音を発しただけだった。 そのことに、三月は戸惑って、言葉を見失う。「あの子は…特に最近のあの子は、ボクのことなんて眼中に無いくらい、キミたちに傾倒してるし、楽しそうにしてた。ボクと関わっても、喧嘩することが多いし。キミたちに反応しない陸が、ボクに反応するとは到底思えない。…今のあの子にとって、ボクは不必要だから」