校門で神來を待っていたのは、宝条鈴奈本人と、使用人と思しき女性、黒塗りの高級車だった。 映像の中でしか見たことがない光景に、神來は呆然としていると、鈴奈が軽くお辞儀をして話し始めた。「数珠さん、突然呼び出して申し訳ありません。お時間は大丈夫でしたか?」 艶やかなセミロングの黒髪をなびかせながら微笑む。左目の下にある泣きぼくろが色っぽく、神來は思わず彼女の美しさにうっとりと見惚れた。(私と同じ制服を身につけているのに、こんなにも身のこなしが違う…綺麗な人…) と、神來はいろいろと思いに耽っていたが、鈴奈の凛とした声色に、ハッとして姿勢を正す。「い、いえ!私は大丈夫です!えっと、宝条さん、私に何かご用事ですか?」「ええ、少し生徒会のことでお話をと思いまして…。ここで話すのも冷えますから、私の家に来て頂けませんか?」「ええ!?…っと、いいんですか?迷惑ではありませんか?」「大丈夫ですよ。むしろ私が突然呼び出したものですから、せめてこれぐらいさせて下さい。…あ、それと。神來さんは寮でしたよね?その門限までにはお送りします。どうでしょうか?」 ここまで言われてしまったら、神來も断る術が無かった。そもそも、名家のお嬢様の自宅に少し興味があったため、行ってみたいというのが本心だった。神來は鈴奈の言葉に頷くと、車に乗せられ、鈴奈の自宅へと向かった。