「おお、やはり器用なものだね」『私のように後頭部に目がある訳でもないのに後ろが見えるとは、やはり貴様は奇妙な奴だ』「それは一応褒めてるんだよな? まあ、前世から似たような事はやってるからな。こっちの世界に来てスキルが手に入ってから、ずっと楽になったし」 【並列思考】スキルを獲得したため、ダグの【ヘカトンケイル】は『オリジン』の時よりも格段に洗練されていた。今なら一度に複数の編み物をしながら、同時に書を認め、料理をする事も可能だろう。……別にそれらが趣味と言う訳ではないが。「ところで、こいつ等いったいいつまで飼っておくんだ? 大体もう四世代目だろ?」 ダグが餌をやり始めた実験動物とは、実験に使う動物では無い。生金や霊銀を移植したアンデッドとの交配実験の結果、生まれた動物である。ネズミに兎、鶏に小さな豚、カエルに蟲までいる。その数は既に数百匹に至っていた。数が多いのは特に小さいネズミや蟲だが、このままのペースで増えていくと幾らなんでも世話がしきれない。『生まれた子に個体差が無いかとか、何回か交尾と出産を繰り返させましたからね。育つ過程で少し自然死しましたけど、増えるペースの方が速いです』「そうだな……次の第六世代あたりで止めるか。正直、普通の小動物と変わった部分が無いので飽きて来ていてね。第四世代ぐらいで一匹ぐらい想像を絶する変異を遂げると思っていたんだが」「オッサン……バイオハザードを期待するなよ」 とんでもない問題発言が出たが、交配実験の終わりも見えてきたようだ。六世代までと言うのは足りないかも知れないが、実際今ダグが餌をやっている動物は、普通の動物にしか見えなかった。(まあ、俺もそれ程動物に詳しい訳じゃないし、この世界に転生してから間近で動物を見たのはこいつ等がほぼ初めてだけどな。馬や犬猫、ネズミを何度か見たくらいで、後は魔物ばっかりだったし。 ……そう言えば、何でこいつ等は平気なんだ?)