翌日。特にいつもと変わらない金曜日の部活帰り。もう冬と言うことで、比較的早めに終了した部活動は、君とのデートを焦らす為の物に過ぎなかった。日が落ちた道を、小走りで進む。家族と暮らす家に着くと、荷物を置いてシャワーを浴び、外出用の服に着替えて、鞄に財布やらなんやらの荷物を詰め込んで家を出た。もちろん、君へのプレゼントも入れて。微かにマカロンの甘い香りが鼻を擽る。やば、流石に匂いでバレたりしないよな...?昨日と同じように、チャイムを鳴らす。目の前の扉から覗いた君は、いつもの制服姿や昨日の格好とは違い、いつにもなく可愛らしい服装に身を包んでいた。まって、この格好タイプにドストレートだわ。ホームラン打っちゃうよもう。「お待たせ。さっ、行こ?」「うーい、行こ行こ」軽くプランは考えてるんだけど、上手く行くかどうか...。「今日どこ行くの?」「まず晩飯済ませたいと思ってるんだけど...まだ食べてないよな?」「うん、まだだよ」良かったぁ。これで晩飯済ませられてたら台無しやんね。前もって調べておいた、女子が好きそうでオシャレな飲食店の前に立つ。「えっ、ここ?かなり女子っぽいけど...さとみ君良いの?」「うん、わざわざ羽夜が好きそうなところ調べたんだぜ?」「ほんと?!ありがとう!...さとみ君は良い彼氏になりそうだねぇ」そう口にした君の顔が曇っているのを見て、少しばかり期待してしまう自分がいる。そんなことねぇよ、と零し、羽夜の腕を掴み店に入った。君の腕は女の子らしい細さで、少しでも乱暴に扱うと折れてしまいそうな、そんな腕で。服の外に伝う君の体温までも、愛しく思えた。「んーっと、じゃあ私はこれにしようかな」「じゃあ俺はこれでお願いします」それぞれメニューを指差し、店員さんに伝える。少しの間学校や友達、家族の話で盛り上がっていると、注文した品が運ばれてきた。君は美味しそうな料理を見ると、目を輝かせる。食べて良い?と言うような顔で俺の顔を見つめる君に頷いて、その小さな口に料理を頬張る君を眺める。降ろした髪の毛を耳にかける仕草や、料理を飲み込んだ後の笑顔、困ったように俺を見つめて首を傾げる、君にとって何気ない動作すべてが、俺の鼓動を早めるのには充分過ぎるくらいだった。