大切にしてね?「りくーっ!!!!」振り返ったあの子が笑顔でボクの目の前から消える。ふわりと浮き上がった体。 全てがスローモーションの様だった。 綺麗な笑顔で地面を蹴り、誰も幸せになれない世界へ行く事を望んだ陸。 ボクは地面を力一杯蹴り、フェンスを必死で蹴り上げるように登り、落ちて行く陸の腕を……掴んだ―――人独りの体重を支えるのは左手一本だけ。右手はフェンスを必死に掴む。 ギリギリとフェンスが鳴る。「ぐっ・・・」 「て、に・・・何で!!何で・・・」 「暴れない・・・でっ・・・」 「だったら天にぃ・・・天が手を・・・離してよ」 「なっ・・・何っ!!」 「ふざけるな!!!!離すもんか!!絶対…離す訳がないだろう!!」 「・・・天にぃ」 「っ、離すもんか!絶対に・・・っ!!!!」だけど、ボク一人の力では陸を引き上げる事が出来なくて・・・ 雨で濡れた陸の手がズルズルと抜けていく。 このままじゃ・・・本当に陸がこの世界から居なくなってしまう…そんな事は…絶対にさせない!!!!「天にぃ・・・離して!!このままじゃ天にぃも落ちちゃう」 「離すもんか!・・・絶対、離さない」 「オレは・・・」 「煩い!!!!後で・・・いっぱい陸のお話・・・聞いてあげるから」 「て、にぃ・・・」 「だから・・・離してなんて、言わないで?居らないなんて言わないでっ」ポタリ、ポタリと見上げる頬に落ちる雫は・・・「天にぃ・・・泣いてるの?」 「ボクの大切な弟が大バカだからね・・・後で・・・みっちりお仕置きだから」