合同ライブが終わって、脳への転移も認められてすぐのこと。天の意識はまだはっきりしていた。けれど、満足に食事もとれず戻すことが増えて、日に日に弱っていった。楽も龍之介も、どうしたら天が苦しまずに済むのか模索しながら懸命に看ていた。「……ねえ、楽、龍」食事を用意していたふたりは、その手をとめて天のほうへ向く。それを合図に天は続けた。「お願いが、あるんだ。……聞いてくれる?」 「なんだよ、改まって」 「ふふ。なに?天。俺たちで出来ることならなんでも聞くよ」開こうとした口を、いちど閉じる。これをお願いするのは、本当に酷なことだと思う。……けれど、ふたりにだから、頼みたい。ぼんやりがし始めた視界で、天は大きく息を吸って口を開いた。「……ボクは、もう長くない」 「……は?お前、なにを」すっ、と龍之介が楽の口元に手をあてる。話を聞け、と目で合図した。 天は続けた。「もう、目が見えなくなってきているんだ。……そのうち、いま以上にひとりで出来ることが少なくなる」 「……」 「……だから、ね」ああ、もう。いつからボクは、こんなに涙もろくなったのだろうか。ここのところ、夜中もずっと苦しくて。大事な仲間と離れなければならないこの現実と向き合うのが、こんなにもつらいことだったなんて。こぼれる涙は拭っても拭ってもとまらない。「……どうしたの、天」