事の顛末に気付いてしまうと、楽は思った。 宝物を踏み潰したのは藍沢直哉だ。陸の嬉しかった気持ちごと踏み躙った。 しかし、これでは天のチョコレートのせいで藍沢直哉に遭遇し、陸が泣いていることになる。 天はきっとお詫びと称して陸を元気づける為にあげたのであって、決して陸を傷付けて悲しませる為に渡したわけでは無いだろう。「七瀬…。」 「…え、あ…すみません…!何でもないです。大丈夫です…!」 呼び掛けると、慌てて涙を拭い、笑う。その笑顔も今は痛々しいだけだ。「…泣きたい時はちゃんと泣けよ。笑いたくもない時に笑うな。見られてんのが嫌ならあっち向いててやる。」 言ったことに嘘は無いが、陸の涙を見ていると心が痛いから見ていたく無いという気持ちもあって目を逸らした。「……八乙女さんって優しいですよね。」 「…優しくなんかねーよ。」 「知ってますか?優しい人って自分のこと優しくないって言うんですよ。大和さんも八乙女さんと同じこと言ってました。」