いつものように、爽やかな笑顔で走り去っていく。でも、私は知っている。フィエロが、どこに行こうとしているのかを。もやもやとした気分で遠くのエルフィを見つめていると、フィエロが近付いていくのが目に入った。エルフィに見つからないように、こっそり、ゆっくり歩いている。本を読んでいる時のエルフィの集中力は凄まじいから、そんなにこそこそしなくても大丈夫だなんて、悔しいから、教えてあげない。私から離れたフィエロはいつも、エルフィの側へ行く。そして、こっそり、木に登る。そして、そのまま。本を読み終えたエルフィがその場を立ち去るまで、そのまま。私からフィエロは見えないけど、多分、ただエルフィを見てるだけなのだと思う。もしかしたら、昼寝でもしてしまっているのかもしれない。フィエロが話しかけないのであれば、エルフィが、フィエロに気付かないのであれば、どうこうするつもりはない。面白くはないけど、別に私はフィエロと正式にお付き合いをしている訳ではないし、私のことどう思っているの?なんて聞ける勇気もないので、文句も言えない。だからいつも、ふたりをただ、遠くから見つめているだけ。でも、今日は違った。そんなに風が強くないのに、枝が揺れたのだ。そして、それに気づいたエルフィが上を見上げた。そして、何かを話している。ああ、とうとう気づいてしまった。声が聞こえないのがもどかしい。二言、三言、言葉を交わすと、エルフィが立ち上がり、手を伸ばした。そして、フィエロに向かって手を振っている。近くにいるのに、何をやっているのだろうか。2往復ほどすると、すぐにエルフィは首を傾げながら手を引っ込めようとした。が、出来なかった。フィエロが、エルフィの指先を掴んだのだ。ダンスパーティ以来、私には触れてくれたことなんてないのに。