それなのに、陸の頬や口の端は切れたり叩かれて内出血をした傷痕がはっきりと浮かび上がり……あまりにも痛々しかった。まだ目を覚ましていないという医師の言葉を背後に聞いて、天は陸の髪をそっと撫でた。数時間前まで、あんなに幸せそうに微笑んでいたのに…… どうして今陸は、こんなことになってしまったのか… 心が黒く塗り潰されていく気がした。「犯人、陸のファンだって……」 「なんで…ファンだっていうなら、どうしてこんなこと…」 「りっくん…大丈夫だよな?」 「口の中の怪我は、少し切れていたみたいだけど、縫う必要は無さそうだって…」 「そうか………」皆がぽつりぽつりと言葉を落としていく。天は何もできなかった自分が悔しくて情けなくて、惨めだった。 目の前にいたのに…… 怯えて助けを求める陸が、目の前にいたのに…ぐっと固く握りしめる天の手にそっと触れたのは、一織だった。 「……悔しいのは、皆一緒です」 自分だって、男に刃物を向けられたというのに、気丈にも周囲を気遣っている姿に、感情が揺れる気がした。しかしそれでも天の気が晴れることなんてない。陸へと目を向け直すと、陸の瞼がピクリとかすかに震えた。 「陸…?」