けれどその試みが成功するはずはない、アイドルは病弱な陸に務まるほど生易しい仕事ではない。 実際、路上ライブが中継された時には雨に打たれて発作を起こしかけていた。ミュージックフェスタでも不調で足を引っ張って、陸を気にした一織が歌詞を飛ばすというミスを犯した。 その後も立て直せない心の弱さも相変わらずで、七人居たメンバーの内の二人だけがデビューすることになった。 それなのに沖縄で見かけた時には、楽しそうに仲間と笑いあっていて、「天にぃッ」 無邪気に自分に近づこうとした、その声を無視したのは面白くなかったからだ。 一緒に暮らしていた頃より、陸は幸せそうに笑っていた。 苦しくて、胸が苦しくて堪らない。 けれど天はそれを表に出す方法なんて知らなかった、だから我慢して溜め込んで心が擦り減っていく。 そんな天をあざ笑うように、陸は汚名を返上してすぐに七人でデビューしてその年のブラックオアホワイトでは天を破った。 陸の歌はむき出しの心そのもののように鮮やかで、喜びに満ちていた。気が付いたら天も笑っていて、こんな風に感情の制御がきかないのはアイドルになってから初めての事だった。 その時初めて気が付いた、半身が居ないと何もできないのは陸ではなく天の方だったのだ。 陸が居ないと、天は心の動かし方も分からない。 誰とでも心を通じ合わせて、愛されて、笑いあえる陸とは大違いだ。