「ふぅ……思ったより人が多かったわね……」 二人は電車を降り、待ち合わせた駅から少し離れたところを歩いていた。「そうだね……それに、わざわざ送ってくれてありがとね」「当然です。彩さんに何かあったら大変ですから」「紗夜ちゃん優しい~、ありがと~」 二人はここでも手をつなぎながら歩いている。 しばらく静かだったが、いきなり彩が口を開いた。「ねぇ、ちょっと人混みで疲れちゃったから、公園のベンチででも休憩しない?」「いいですね、そうしましょう」 そうして二人は、彩の家までの途中にある公園のベンチに腰かけた。 辺りは静寂に包まれている。「今日は、楽しかったね」「そうですね……へっくし……!」 紗夜のくしゃみがわずかながら公園に響く。「紗夜ちゃん大丈夫!? 風邪ひいちゃったら大変だよ!」 彩は自分がしていたマフラーをほどき、紗夜の首に巻く。「これでは彩さんが……」「私は大丈夫だよ! こう見えても体は丈夫なんだ……っくしゅん!」「大丈夫ではないじゃないですか。貴女はアイドルなんですからもっと自分の身体を大切にしてください」「あっははー……ごめんね」「しかし、どうしたものかしら……これではマフラーが……」 紗夜が頭を悩ませていると彩は距離を詰めて再びマフラーに手をかけた。「ちょっとごめんね」