やけに静か………寝ているんでしょうか?」「物音1つしない。そうかもね」理の案内で陸は、やって来た。 とても静かで、夕暮れの光が暖かく、室内を包む。「やぁ、理…お客人には、コーヒーでも淹れるのが礼儀だろう?」「な、何で………?今日、発つのですよね!?日本を発つ、と言っていましたよね…」「予定が変わったんだ。天に会ったら、少し揉めてしまって………」九条の手袋の漆黒に、鮮血の彩りがあった。 陸は、全てを悟った。「く、九条は………お前は!天にぃを殺したッ!!!何処だ!?天にぃを返せ!」「違うよ、あの子が選んだよ?“永遠”を選んだつもりなんだろうけど。あの子が手にしたのは、そんな偉大なものではない。単なる“破滅”に過ぎない。何の爪痕にもならず、誰の心にも響かず、些細な記憶にもならず。無駄な消滅を選んだ」「ふ、ふざけるなぁぁ!!!」陸は、家中に響く声で、ありったけの罵声を浴びせた。 天の部屋を探し出し、力任せに扉を開けた。 風に靡くカーテン。 物語の終わった本。 無造作なベッド。 血濡れたナイフ。 赤い写真。