これは悪い意味で言ってるわけじゃないんですけど、今回の展示を見ながら「なんだか原爆ドームとかひめゆりの塔とかに来たみたいな感じだ……」と思いました。辛かった。あるべきでない姿に囲まれて、死んでしまった悲惨さに囲まれているようで辛かった。悪い意味で言ってるわけじゃないんですよ。どんなものであれ、感情を起こさせるというのは簡単にできるものではありませんから。好きの反対は無関心ですから。こういう感覚知ってるなあ、って思い出してみたら高校の修学旅行で沖縄に行ったときに見た、平和記念資料館の展示。薄暗くて広くて静かな展示室に、戦争のころのことを書いた手記がたくさん展示されていました。いつもつるんでいた女子四人でのグループだったのに、その部屋ではみんなばらばらになって、ぽつんぽつんとライトで照らされている手記をそれぞれが黙ってめくっていて、ずいぶん時間が経ってからひとりの子が「これ際限なく読んじゃうからもう出よう」と言ってくれてその部屋を出ました。暗い部屋を出た先に海が広がっていて、晴れやかな景色なのに妙に凪いだ気持ちでそれを見たことを覚えています。素直にはしゃげなくて、なんとなく寂しくて悲しくて、でもこの海があるから大丈夫だ、みたいな変な感覚。わたしにとって、今回の展示における「晴れやかな海」は鯰尾藤四郎でした。