「彼は僕が初めてCDを買ったアーティストなんだ。僕のおすすめの曲はこれ」 何度も歌詞カードを読み返した跡のあるジャケットを見せながら、壮五が声を弾ませて熱心に語る。 紡は今、壮五と三月の部屋にお邪魔していた。壮五の好きな音楽のことが知りたくて質問をしたら、部屋に入れてCDコレクションを見せてくれたのだ。 壮五がCDをプレーヤーに入れ、再生ボタンを押す。 次の瞬間、暴力的なほど激しいドラムの波が押し寄せてきた。泣いているようなエレキギターと叫ぶようなボーカルが絡まり合い、勢いがどんどん増していく。 目が回りそうな激しい曲が終わった。勝手に壮五の好きな音楽をゆったりしたバラードか、クラシック音楽だと思い込んでいたけれど、よく考えてみるとそんなことは一言も言っていない。「気に入ってもらえたかな……?」 自信なさげに微笑む壮五に衝撃から回復した紡は頷いた。 「すごくかっこよかったです!」 「本当!?よかった」 実際、最初の衝撃が薄れると激しさの中に哀愁もあるいい曲だと思った。ただ、壮五のイメージと違って驚いただけで。 「ソウゴの好きな歌はベリーハードですね」 「壮五らしいよな」 ドアからナギと三月が顔を覗かせる。 「ツムギ。ワタシのfavorite songも聴きませんか?」 壮五の電子キーボードの前に座り、ナギが長い指を鍵盤に滑らせる。長いまつ毛を伏せ、儚げな表情で唇を湿し……ハイテンションで歌いだした。 「まじかる☆ここな♪まじかる☆ここな♪無敵のヒロイン♪」 本日二度目の衝撃を受ける紡に、三月が憐れむような眼差しを送った。