以前、そうあれは両親の葬儀の席だ・・陸と昔から仲がいいという歳上の男に会ったのだが、彼が何かと陸の世話をしているのだと述べていた。昔からお人よしで騙されやすい陸のことだ、もしかすると、口座に振り込んでいたお金を騙し取られていたのかもしれない。そうだとすれば、陸のこの痩せぎすな体の理由にも繋がるだろう。「・・天にぃ?」 「・・陸」 考え事をしていると、陸に腕を掴まれ下から覗き込まれる。 あの頃と変わらない、純粋で真っ直ぐな瞳がそこにはあった。「これは夢、なの?・・天にぃがここにいるわけないもんな・・」 「・・・」 「オレ・・天にぃのこと大好きだったんだよ?なのに・・・」 そうだ。彼がこんなに、憎悪も何もない目で自分を見てくれるなんて、普段ではありえないのだ。(どこで間違ってしまったんだろう・・・) 彼の援助のため、彼を迎え入れるためにαの家の養子となった自分。あの選択は間違っていたのだろうか。 ずっと変わらず陸の傍にいてやれば・・・自分の方が身売りでもなんでもして金を稼いでやっていれば、陸が苦しむこともなかったのだろうか。 そう思うと、気が付けば。「・・天、にぃ・・?」 陸の細い体を優しく抱きしめていた。 拒絶はされない。本当に、この状態がずっと続けばいいのに。そう思うが、きっと彼が覚醒してしまえば、またあの憎悪に満ちた眼差しを向けられるのだろう。もしかすると、一生許してもらえないかもしれない。自分はそれだけのことをしでかしたのだと、今になってようやく理解した。「・・陸、ごめんね」 「・・何で天にぃが謝るの・・・?」 「ごめんね、陸・・・」 戸惑う陸の声にも、天は謝ることしかできなかった。