「信じられないんだけど。」 そう言う兄の顔は怒っているように見える。いや、これは怒っている。 「怒らないって言ったじゃん!」 「これは十分怒るような理由になるよ。」 要するに好きなのがつらくて家を出たってことでしょう。“どうして家を出たのか” 結局兄に口で勝てるはずもなく言うことになってしまった。 「家を出た理由だけずっと分からなかったけど…」 はぁ、と大きく息を吐く天にぃ。 「それでボクは5年も会えなかったわけ。」 「だってぇ…」 家を出て逃げるという手段を使った自分が悪いのだが。 「好きな人が兄弟なんだよ。家出たくもなるじゃん。」 「ボクは出ようとは思わなかったけどね。」 「天にぃとは違うの!」 「好きな人がずっと一緒にいるんだよ。赤の他人同士よりラッキーじゃない。」 なんてポジティブなんだと思わずにはいられなかった。 そう思った俺の心を読んだのか。