「天にぃ…。天にぃが、オレの本当の兄さん…」そう呟いたとき、陸の記憶のピースが正しくはめられたような感覚がした。 天が陸の本当の兄弟。 あの声の主は天。「…まさか、今更天が記憶を取り戻すとは…誤算だったよ」 「く、九条さん…?」九条を取り巻く空気が変わる。 今まで優しそうな笑みを浮かべていた九条に表情が無くなっていたのだ。「理!こっちに!」 「は、はい!」何か不穏な空気を察知し、戸惑った表情を浮かべていた理を天は呼び寄せた。 天は陸をソファに預けると、立ち上がって理と陸の前に出る。「天。君はもっと賢い子だと思っていたよ。おとなしく僕に従い、今まで通りに記憶を失ったままで居たら君は伝説のアイドルになれたというのに」 「そんなもの、貴方に従わなくとも自分の実力だけでなってみせます」 「おや。天もずいぶん生意気な口を聞くようになったね」 「答えてください。貴方はボクと陸が遭った交通事故について、なにか知っていますよね」天が強い口調で問いただしても、九条は何も答えない。 その様子に天は内心舌打ちしつつも、次の手を考えていた。「…事故、九条さんが仕組んだんじゃないですか?」 「!!陸?」天が何を言おうか考えていたときに、急に話し出したのは陸だった。 陸はソファから離れ、天の隣に立った。「だっておかしいよ…。なんで九条さんはそんなに事故のことに詳しいの?なんで事故の調書を貴方が持っているの?警察の書類を、貴方が持っているの?」 「…」 「それに施設の人達がオレの両親を色んな手を使って探したのに見つからなかったのって九条さんが裏から仕込んだことなんじゃないですか?両親を探す施設の人達には事故の情報は全く教えなかったのに、オレたちと何も関係のない九条さんには事故の情報が届いてるって、どう考えても不自然だよね」